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コニク

  • 2008-10-15 (水)

 「天気がいいから布団を干すように。」なんて司令を相方から受けた為、
しゃあねーなーって雑巾持ってベランダに出ると下に猫がふらふらとしている。

 暇だし、じっくり猫でも観察でもして、地域にうろつく猫の姿形毛並を吟味し、俺が家系図と縄張り図でも作ってやろうじゃねえかなんて思ったが、ここで私が布団をばさとベランダに投げ出せば、猫は私を睨み、「散歩の邪魔すんじゃねーよクズが!」なんて意味のシャーとかいう鳴き声、唸り声とともに走り去る。
 その噂は猫業界に瞬く間に広まり、あの家は布団をばさと投げ出すからなるべくなら近寄らない方がいいよなんて広まり、以降地域社会では猫にまで軽んじられる。
「地域の猫にも馬鹿にされるようじゃ、あいつの人生も知れたものだな」という事にもなりかねない。
このままでは人生を賭けた一大事業、猫の家系図に重大な支障をきたす事になんて狼狽して、瞬時に猫の模様、グレーと白が斑に混じる邪悪な感じの猫を一匹覚えて、とりあえず台所の片付けかなんかしてお茶を濁そうと部屋に戻りうろうろする。
すると合点がいかぬのは私の相棒で、こやつは布団を干しに行ったのに、ベランダを拭いて満面の笑みで台所を片付けている阿呆というのはこの私。
 
「ここまで阿呆とは思わなかった」という意味の言葉を言われかけたが、私にも思うところがあるってのは家系図の事であるのだが、その事について相棒は今、私の重大事業の決意を知らない。
しかし、ここでとっさに猫の分類を始めた旨を説明したところでやはり阿呆な奴、間抜けな奴、暇な奴、うだつの上がらない奴と思われる事は必至である。
 
 私は、うだつをあげるために、「今はベランダが濡れてるからね。たははははは。」と空虚に笑いつつ、いそいそと布団を取り、ベランダに布団をばさとかけると、そこに件の猫が通り過ぎようとしている。
 
 猫は私の投げ出した布団の音に気付き振り返り、「このひま人!散歩の邪魔しやがって」といった風な意味合いの唸り声を出した後、小憎らしい顔で私を睨みつけて走り去ったので、この猫を「コニク」と名付ける事にした。
くくくく。

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